視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)

視神経乳頭陥凹拡大とはどういうことでしょう?(人間ドックで指摘された時)

 視神経乳頭陥凹拡大とは簡単に言うと視神経線維の数が減っている可能性があり、緑内障の疑いがあるということです。

 人間ドックや健診で眼底写真を撮った結果、所見の欄に‘視神経乳頭陥凹拡大’とかかれていたといって受診される患者さんがいます。患者さんもその意味がよくわからないことが多いようなので、ここで説明します。

 まず、意味ですが視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の陥凹(かんおう)つまり、へっこみが拡大しているということです。このように言われてもまだ意味がわかる人は少ないと思いますのでさらに説明していきます。

施設写真

図1                      図2

 図1は右眼の眼底の図です。視神経乳頭は眼底の中心(中心窩)より少し鼻の方に寄ったところにあり眼底写真で白い円として写るところです。ここは眼球から血管(網膜中心動脈、網膜中心静脈)や神経(視神経)が出入りしているところです。

 次に、視神経について説明します。網膜に写った光はそこにある視細胞という細胞で電気の信号に変えられるのですが、この電気の信号を脳まで運ぶ電線の役割をしているのが視神経線維です。視神経は神経線維という細い繊維が集まって束ねられたものです。

 では、視神経乳頭の陥凹が大きくなる(拡大する)と言うことは何を意味しているのでしょうか? 視神経の大きさや形は人によって個人差があります。その中心に陥凹(へっこみ)が全くない人や正常な人でも少し陥凹がある人はいます。視神経乳頭陥凹拡大とはこの陥凹が図3のように正常な人より病的に大きくなっていると言うことです。陥凹が大きくなる原因はその中身が減っているため、すなわち、そこを通っている神経線維の数が減少していると言うことです。

図3視神経乳頭陷凹の拡大

 視神経線維の数が減る代表的な病気は緑内障です。つまり、視神経乳頭陥凹の拡大は緑内障の疑いがあるということです。

それでは緑内障とはどういう病気なのでしょうか?

 緑内障は、何らかの原因で視神経が障害され視野(見える範囲)が狭くなる病気です。眼圧(眼の中の圧力)の上昇がその病因の一つと言われています。一昔前までは緑内障は眼圧が上がって視神経が障害される病気と言われていましたが、その後、実際は眼圧が正常でも眼圧が高い時と同じように視神経が障害される’正常眼圧緑内障’というタイプの緑内障が以前から言われていたいわゆる‘眼圧が高いタイプの緑内障’より多くの人がかかっていることがわかりました。

機器写真

図4

 緑内障は視神経が障害され進行すると図4のように視野欠損(見えないところ)が徐々に増え、最後には視力も低下し失明してしまう病気です。視神経は一度障害されると元には戻らないので緑内障の治療は視神経障害の進行を止めるか遅くすることです。主な治療は眼圧を下げることで目薬や飲み薬、レーザー、手術などの方法があります。

 このように緑内障は一度悪くなると元に戻らないので、診療の鍵は早期発見、早期治療ということになり健康診断などで早く発見するることが大切です。

 以上よりドックや健康診断で視神経乳頭陥凹拡大が指摘された時は早めに眼科を受診して眼底検査、視野検査および眼圧検査を受け、緑内障ではないかどうかを診てもらってください。

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